私はアイリス。
都市伝説は、ただの作り話じゃない——
語られぬ真実を、あなたと共に辿る語り部よ。
夜の廊(ろう)に旗が揺れるとき、紋章は目を覚ます。――獅子は口を閉ざし、鷲は影を裂き、十字は誰にも見えない線を地面へ引く。人はそれを“伝統”と呼ぶけれど、本当はね、合図(サイン)よ。選ばれた者だけが読み取れる、古い約束のコード。
◆ 扉:見えない権威の設計図
紋章は魔術じゃない。だけど、魔術“みたいに”働く。庭で低く吹く風、鉄の匂い、蝋燭の炎――そうした演出に重ねて掲げられると、人は古い物語へ自ら足を踏み入れる。獅子の爪は勇を、鷲の双頭は統合を、十字は境界(結界)を。図像はそれぞれ、集団を動かすボタンに接続されている。
◆ 廊下の影で拾った“密儀ノート”
・獅子:門を守る番犬。臆病者に口を挟ませない威光の仮面。
・鷲:高みからの視線。二つの首なら、二つの世界の橋渡し。
・十字:誓いの杭。線を越える者は同じ物語の登場人物にされる。
・百合:静かな支配。清浄で縛るやり方。
・鍵:入る権利、出る権利、そして“閉め出す”権利。
◆ 図像は血を語る、けれど血そのものではない
盾が四つに割られるのを見たことがある?――婚姻の痕だわ。家と家が結び直されるたび、紋章は小声で書き換えられる。長子には印、次子には別の印。紙に書かれた文言より、祭壇の前で掲げられた絵の方が人を従わせる夜もある。だから私は“13血流”の話を聞くとき、まず紋章の変化を見る。陰謀の霧より、儀礼の手触りの方が正直だから。
◆ 室内で試す、小さな儀式(検証)
- その紋章が“どこで”使われているかを確かめて。玄関? 書簡? 式典?――場所は意図。
- 色(赤・青・金・黒……)が夜目にも読める配置か? 読めるなら、伝える気がある。
- 最近の版と昔の版を並べ、何が足されたかを探す。足されたものは、物語の“欲望”。
- そして、使われなくなった版を探す。消えた紋は、隠したい過去の影。
◆ 宮殿の奥、囁き声
「紋章なんて飾りだ」と人は笑う。だけど笑いながら足は止まる。旗の前では、声のトーンが半歩だけ低くなる。――それが紋章の魔力ではなくて何? 見えない権威は、超自然の向こう側ではなく、こちら側の心理に宿る。だから、私たちは紋章を読む。誰が、いつ、どこで、どの物語を“召喚”したのか――その現場の痕跡を拾うために。
◆ ささやかな警告
十字があるから秘密結社、双頭だから帝国の手、という短絡は罠。紋章は“意味”を持つけど、“原因”ではない。合図は扉、扉の向こうにいるのは人間よ。権威は、儀礼と舞台装置と習慣で作られていく。だから見抜くの。誰が台本を書き、誰が照明を落とし、誰が拍手のタイミングを合図しているかを。
◆ そして、あなたへ
次の夜、古い建物に入ることがあったら、壁の高い位置――人が無意識に見上げるあたりに目をやって。狩りを終えた獅子、外界を見張る鷲、交差する線。もしも胸がすこしだけ熱くなったら、それはあなたの中の古い物語が立ち上がった合図。――紋章は、私たちの中に住む。
次回――あなたと辿る、さらなる真実の欠片。
私はまた、語りに戻ってくるわ。——アイリス

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